音楽ライターくまさんのSalena with Friends 2011

「音楽ライターくまさんの Salena with Friends 2011」 Vol.4

“THE MOST PERFECT GIFT”というタイトルが付けられた、サリナ・ジョーンズの2011年12月の日本ツアー。今回は、夏に結成されたレギュラー・グループ“SALENA JONES with FRIENDS"(納浩一:b、森下滋:p、藤井学:ds、道下和彦:g)との2度目のツアーとなる。さらにこの日のステージの模様は、ライブ・レコーディングされるということもあり、小池修(sax,fl)と村田陽一(tb)がゲストとして参加するという、まさにスペシャルな一夜となった。

まずは“FRIENDS”の4人と小池修がステージに上がり、インストゥルメンタルによる「TEE BAG」(ステップスのナンバー)が演奏された。このドライブ感溢れる演奏を聴くだけで、彼らの実力・音楽性の高さがわかる。実はサリナの来日前に“FRIENDS”での単独ライブも行なっており、メンバー間のコミュニケーションもバッチリだ。これから始まるライブへの期待が、どんどんと高まっていく。 そしてサリナが純白のコスチュームで登場し、ライオネル・リッチーの「HELLO」から、ライブがスタートした。
1部は、ボサ・ノバ・ナンバーの「ANTONIO'S SONG」「AGUA DE BEBER」、今やすっかりサリナのレパートリーとなった感のある、J-POPのカバー「I LOVE YOU」「WHISKY」、ジャズのスタンダード・ナンバー「TEA FOR TWO」「WHAT A WONDERFUL WORLD」「SENTIMENTAL JOURNEY」「HOW HIGH THE MOON」「STARDUST」と、様々なスタイルのナンバーを、時にスウィンギーに、時にソウルフルに、そして時にソフトにと、豊かな表情で歌い上げていく。実は、サリナの50年を越える長いキャリアの中で、意外にもライヴ・レコーディングは今回が初めてだということで、サリナ自身も、いつも以上に気合いが入っているようだ。表現力と説得力のあるボーカルにも、さらに磨きがかかっている。FRIENDのメンバーたちも、2度目のツアーということもあり、サリナとの呼吸もピッタリと合っているし、彼女の音楽性をより理解し、その歌声を絶妙にサポートしている。サリナもそんな彼らを信頼し、まさにレギュラー・グループでしか出せない、心の通ったアンサンブルを聴かせている。






全員がひとつになってスウィングした「HOW HIGH THE MOON」のあと、サリナが“Friends!”とグループを賛えたのも、彼女の心からの気持ちだろう。グループ名の通り、サリナとメンバーが“親友”になっているのである。そしてこのような信頼関係があるからこそ、サリナも初めてのライブ・アルバムをこのメンバーで制作する気になったのだろう。また小池修、村田陽一のプレイも、ライブにさらに彩りを加え、「AGUA DE BEBER」や「HOW HIGH THE MOON」でのふたりのホーン・アンサンブルや、「ANTONIO'S SONG」「TEA FOR TWO」での小池修のフルートは、サウンドをより豊かなものにしてくれていたし、「SENTIMENTAL JOURNEY」での村田陽一のトロンボーン・ソロも素晴らしかった。
そしてサリナが圧倒的なスウィング感を聴かせ、メンバー全員で白熱のソロ回しを展開した「IT DON'T MEAN A THING」で1部が終了。
2部は“FRIENDS”+村田陽一によるインストゥルメンタル「LOVERY CHERRY」(道下和彦のオリジナル曲)から元気にスタートだ。そしてサリナが、今度は黒いドレスで登場し、チャップリンの名曲「SMILE」を優しく歌い始める。その後は「MY FOOLISH HEART」「NIGHT AND DAY」「BUT BEAUTIFUL」「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」といったジャズのスタンダード・ナンバーが続き、サリナのボーカルもさらに表現力が増していく。彼女の“声の力”は圧倒的だ。決して押しつけがましくなく、それでいてストレートに聴き手のハートに伝わってくる声は、彼女の歌の大きな魅力であり、それがステージで遺憾なく発揮されている。


またこの日は、ダイナ・ワシントンの名唱で知られる「THIS BITTER EARTH」、ゴスペル・テイストのナンバーをブルージーに歌い上げる、ツアー・タイトルにもなった「THE MOST PERFECT GIFT」という新しいレパートリーも披露してくれた。こういったところにも、このライブ・レコーディングにかける彼女の意欲が伝わってくるようだ。またクリスマス・シーズンということもあり、森下滋のピアノとのデュオで「THE CHRISTMAS SONG」をしっとりと、そして感動的に聴かせてくれた。
さらに、彼女の代表曲ともいうべき「MY LOVE」を堂々と歌い上げ、ここで聴かせた小池修のテナー・サックスとボーカルとのエモーショナルな掛け合いは、この日のハイライトのひとつとなった。そして全員で、ビリー・ジョエルの名曲「JUST THE WAY YOU ARE」をハートフルに歌い、演奏したあと、サリナがステージを降りて、この夜のライブは一旦終了。だが客席からの拍手は鳴り止まず、再びサリナがステージに上がり、アンコールに応えて「MY FUNNY VALENTINE」と「YOU'VE GOT A FRIEND」をスケールの大きなボーカルで聴かせ、この日のライブは感動的に幕を閉じた。サリナ・ジョーンズというシンガーの歌の素晴らしさをあらためて実感させてくれたとともに、“FRIENDS”との友情、そしてメンバーみんなで音楽を作り上げていくことの楽しもを伝えてくれた、充実のライブ・パフォーマンスだった。キャリア50年を超え、サリナ・ジョーンズはシンガーとして、ミュージシャンとして、まだまだ進化しようとしている。その意欲は驚異的だし、その歌にかけるひたむきな姿勢も、きっと人々を感動させるのだろう。
この日のライブ・アルバムは、2012年の5月にリリース予定だという。きっと彼女にとっても、代表作のひとつとなることだろう。リリースが今から楽しみだ。




音楽ライター
熊谷美広